安い店は…

バイト中のスーパーは安売りスーパーだ。

店舗は広い。

そのようなスーパーは各地に何店舗かあるだろうが、大型ディスカウントスーパーってのは、店舗だけじゃなく駐車場も広い。

そういうわけでかどうかは知らんが、都会に少ない。

安いし店舗が大きい分品揃えも豊富。

5:00に出勤すると日によって、商品によってはほぼ売り切れている。

夜中にも搬入はあるが冷蔵ではない荷物のようだ。

6:00に運ばれて来る荷物は冷蔵食品、生鮮食品、冷凍食品である。

それらを各所に振り分け、商品棚に陳列する仕事をしている。

他の時間帯で働く班でもそうだが、各班1人はレジとレジ近くの商品陳列を担当する。

 

先日、レジ担当だった私。

時間は7:00頃か。

でかい客用カートにカゴを3つ載せた恰幅のいい男性のお客さんが私に「もやしはないのか」と。

青果も届いたばかりで、商品はまだダンボールの中だ。

それも業務用大型カートの中で積み重なっている。

青果の品出し班は8:00にならないと出勤しない。

お客さんが所望すれば、勝手にダンボールも開けることはあるのだが、レジ担当はあまりレジを離れられない。

悪いことに青果売り場からレジは全く見えない位置にある。

他の人にその仕事を振ればよかったと今になって思うが今更だ。

もやしも網目のプラケースに入っていれば、外からも確認しやすいのに、ダンボールに入っているようだ。

バナナなんかは箱を見ただけでバナナとわかる。

大きなバナナの絵が印刷されている。

もやしはどの箱だろうか。

青果を担当したことがないので、よく知らない。

 

2箱目の箱を開けるとモヤシ!

よーし!と思って、お客さんに見せると、それじゃないという。

そのもやしは大容量と袋に書いてあって、そこらのスーパーで30円くらいで売ってるもやしの3倍くらいの大きさだった。

もっと小さい30円くらいのがいいらしい。

 

普段、青果の大型カートは5台ほど届くのに、その日は2台。

中央市場が休みだったのか。

お客さんは、「なぜ2台しかカートがないのか、いつも5台は並んでいる」とうるさい。

こちらはレジにお客さんが来てないか気が気でないというのに。

入荷がカート2台のみっておかしい。上司に確認しろとお客さん。

知らんがなと言わずに7:00出勤の若い社員さんを見つけてやっと問題を彼に丸投げした私はえらい(笑

 

社員さんはカートの中から件のもやしをうまく見つけ出し、お客さんをレジに促す。

その日のレジ担当は私だったので、会計しようとすると…

「研修中の人はいいよ」と社員さんに会計をさせて帰って行った。

名札の左肩には研修中の文字がある。

だが、名札の交換がめんどいのか50人のアルバイトの大半が研修中である。

そんなことお客さんが知る由もないが。

 

うるさいお客さんが帰った後、ゆっくりこちらへ歩いてくる問題を解決した社員さん。

「もやし見つかりましたか?」と声をかけると、

「はい、見つかりました」

「レジのことも気になっていて、もやし見つけられず、お客さんに嫌味言われませんでしか?

すみません」と悪いと思ってはいなかったが謝っておく。

若い社員さんは小声で「いやいや、でも『研修中の人はいいよ』なんて、さすがに気分悪いですよ」と気遣ってくれた。

「いいえ、私が至りませんでした。申し訳ありません」と殊勝に頭を下げたが、腹の中では「安い店は安い客」という言葉が渦巻いていた。